
「写真では良さそうなのに、住んだらイメージと違った…」
そんな後悔をしないために、内見は“見るだけ”で終わらせないことが大切です。
この記事では、内見当日の動き方・持ち物・チェックすべきポイント・不動産会社への質問までを、ひとつの流れでまとめました。
まずは全体像|内見の流れ(当日〜申込・審査)

◆ 物件候補の絞り込み → 希望共有 → 持ち物準備
候補を3〜5件に絞るのは、体力と集中力を最適化するため。家賃総額(管理費込み)・駅距離・必須設備など同じ尺度で比較すると、内見中に迷いが減り、判断がブレません。
不動産会社への事前共有(入居人数・希望日・ペット・車)は、紹介ミスマッチを防ぐ鍵。条件が明確だと、当日“見るべき部屋だけ”に時間を割けます。
持ち物は前夜に準備。スマホは写真・メモ・方位/騒音アプリが使えるので内見の“記録装置”に。メジャーとスリッパ、家具寸法メモがあると、暮らしのイメージが一気に具体化します。
候補は3〜5件に厳選(家賃総額/駅距離/必須設備で比較軸統一)
事前共有(入居人数・入居希望日・ペット・車の有無)
前夜チェック(スマホ・メジャー・スリッパ・身分証・家具寸法メモ)
◆ 集合場所・ルート・所要時間の確定
内見は、まず店舗に立ち寄って担当者と条件のすり合わせを行うことが基本です。希望条件の再確認や、最新の空室状況・新着物件の提案を受けることで、より効率的な内見ルートを組むことができます。
現地集合は、時間がどうしても取れない場合や、自分の車での出入り・駐車のしやすさを確認したい場合などに限定するのがおすすめです。
所要時間は、移動を含めて2〜3件の内見で2〜3時間程度を見ておくと安心です。希望エリアによっては移動距離が長くなるため、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
また、午前・午後・夜など時間帯によって日当たりや周辺環境の印象が変わるため、確認したい時間帯がある場合は事前に担当者へ伝えておくことが大切です。当日に「夜も見たい」と伝えても難しい場合があるため、不動産会社の営業時間も考慮してスケジュールを立てましょう。
◆ 「良ければ即申込」まで想定
人気物件は“その日”で埋まります。申込情報と書類をスマホで持ち歩くと、好機を逃しません。入居希望日、勤務先・雇用形態、年収目安、緊急連絡先は控えを用意。本人確認・収入確認は写真データでOKのことが多いです。
申込前には、初期費用の内訳(敷/礼/保証料/鍵交換/消毒/24Hサポート)や更新料、インターネット方式と実効速度を最終確認。暮らし始めてからの“隠れコスト”や通信ストレスは、満足度を大きく左右します。
申込情報を手元に(入居日/勤務先・雇用形態/年収/連絡先)
書類はスマホ保存(本人確認・源泉徴収票/給与明細の画像)
最終確認(初期費用内訳・更新料・ネット方式/実効速度)
チェックリスト(携行用)|内見の持ち物

持ち物は“判断の精度”に直結します。写真・採寸・音と光の体感をその場で記録できれば、後日の比較で迷いません。「記録→比較→決定」の流れを支えるセットです。
スマホ:方位アプリ(直射時間の確認)/簡易騒音計アプリ(窓開閉で騒音差を可視化)/写真・動画(窓・収納・キズ)/メモアプリ(気づきと寸法)
メジャー(3.5m推奨)・筆記具:玄関幅・廊下幅・ドア有効開口・防水パン・冷蔵庫スペースなど“動線と設置”の計測に。
スリッパ(土足NG対策)・マスキングテープ:採寸位置に軽く印を置くと、サイズ感の再確認が楽。跡が残らないよう短時間で剥がす前提で。
身分証・申込用メモ(勤務先/年収/緊急連絡先)・印鑑(任意):即申込の備え。
家具家電サイズ表:冷蔵庫・洗濯機・ベッド・デスク・ソファ・テレビ。搬入経路(階段/エレベーター・曲がり角)のチェックにも活躍。
〈写真3枚+一言メモ+評価(○/△/×)〉を残すと、比較が一瞬。主観のぶれを減らし、同伴者とも話が合いやすくなります。
室内チェック|必ず見るべき観点(カテゴリ別)

◆ 採光・風通し・におい
<狙い> 日中の明るさ・湿気・生活臭は満足度を大きく左右。時間帯と季節で印象が変わります。
<その場で> 方位アプリ・鼻・窓の開閉で即判断。
方角と直射時間帯(午前/午後/季節)
・南東〜南は朝〜昼が明るい/西は午後~夕方の西日が強い。
・冬は太陽高度が低く、直射が入りやすい(夏は遮熱対策が要る)。
→ メモ:午前/午後どちらで直射?カーテン要否?窓の開閉・網戸破れ・結露跡・カビ臭(芳香剤の強さに注意)
・窓は“全開まで”動かし建付け確認。網戸破れや戸車のガタつきも。
・窓枠・巾木・クローゼットの角に**黒点(カビ)**や結露跡がないか。
・強い芳香剤=におい隠しの可能性。収納内・洗面下も嗅ぐ。バルコニーの抜け・向かい距離・洗濯の乾きやすさ
・向かいの建物までの距離/抜け感で採光・通風が変わる。
・物干し金物の高さ・幅、屋根の有無、日照時間もチェック。
◆ 騒音・振動
<狙い> 騒音は“慣れ”にくい。内見時は静かでも、生活時間帯で変わることが多い。
<その場で> 窓開/閉・玄関/バルコニーで簡易騒音アプリを計測。
近隣道路・線路・工場音、共用部の生活音(廊下・駐輪場)
・窓開閉でdB差を見る(目安:40dB台=静、50dB台=普通、60dB~=騒)。
・共用廊下・駐輪場・機械式駐車場の稼働音を現地で耳チェック。上下階の足音(床材の硬さ/梁位置)・窓閉時の音レベル
・天井梁の位置=踏み板の剛性に影響。梁直下は音が伝わりにくい傾向。
・サッシの等級(T-2/T-3など)が分かれば尚良し。閉めて計測を。エレベーター・ゴミ置場近接による音/におい
・開閉音、待機時のモーター音、早朝のゴミ収集音。
・“におい”は風向きと気温で変わるため、廊下で深呼吸して確認。
◆ 水回り(キッチン・浴室・洗面・トイレ)
<狙い> 日常のストレス源No.1。水圧・排水・臭気は必ず当日実測。
<その場で> 水を出す/止める、栓をする、においを嗅ぐ。
水圧・湯温の立ち上がり・シャワーヘッドの劣化
・キッチン/洗面/シャワーを“同時に”出して勢い確認。
・給湯は40℃目安で立ち上がり時間を体感。ヘッド割れ・ホース亀裂も。排水速度・臭気逆流・コーキング黒ずみ・カビ
・栓をして水を溜め、一気に抜いて渦の強さとゴボ音を確認。
・排水口周りやシリコン目地の黒ずみ=清掃難・再発可能性。給湯器年式・追い焚き・浴室乾燥機の動作
・給湯器シールの製造年を撮影。10年超は交換リスク。
・浴乾は“風量と温度”を実運転で。動作音も記録。洗濯機置場(蛇口高さ・防水パン寸法)
・幅・奥行・蛇口高さ、排水口位置を採寸。糸くずトラップの有無も確認。
◆ 収納・採寸(家具家電の入り/動線)
<狙い> 入らない・通らないは致命的。搬入経路→設置→配線の順に確認。
<その場で>メジャーとスマホで“入口→曲がり→設置面”を採寸。
玄関・廊下幅、冷蔵庫/洗濯機/ソファ/ベッドの搬入経路
・ドアの有効開口(取手~反対枠)、廊下幅、曲がり角の内法を計測。
・エレベーター内寸・共用廊下幅も撮影。大型家具は図面合わせ。クローゼット奥行・枕棚高さ・ハンガーパイプ長
・奥行55cm↑でハンガーが“斜めがけ不要”。高さはロングコートに注意。
・枕棚は収容量と使いやすさを想像してメモ。コンセント位置と数(TV・ルーター・ワークデスク周り)
・テレビ背面・ベッド脇・デスク予定位置・キッチン周辺の口数×位置。
・ルーター置場と配線見せの可否(モールで隠せるか)も確認。
◆ 設備・建具の動作
<狙い> 不具合は“入居前”に申告して記録。動作+セキュリティ+電気代をチェック。
<その場で> すべて“手で動かす/押す/回す”。
玄関ドアの建付け・ディンプルキー・モニターホン
・閉めた時の密閉感/隙間風の有無。ドアクローザーの戻り速度も。
・鍵の種類(ディンプル/複製可否)とモニターホンの録画機能を確認。エアコン年式・フィルター状態・型番(消費電力の目安)
・型番撮影→年式/能力の検索が可能。10年超は交換検討。
・吹き出し口のカビ/臭い、運転音の大小をチェック。網戸・カーテンレール・窓鍵・雨戸の有無
・網戸の“閉め切り”で隙間風。カーテンレール強度と丈(掃き出し/腰窓)。
・雨戸/シャッターは台風・防犯面でプラス。ネット方式(光直結/VDSL/CATV)・最大速度・無料プランの上限
・“無料インターネット”は実効速度が命(VDSLは30~100Mbps程度に落ちやすい)。
・ルーター置場と配線ルートも当日確認。
◆ 劣化・原状回復リスク
<狙い> 退去時トラブルを避ける。既存キズの事前記録が最大の防御。
<その場で> 広角と寄りの2枚撮影+日付メモ。
床の傷・膨れ、壁紙の破れ・画鋲跡・日焼け
・日焼けの“色ムラ”は家具配置に影響。フロアの浮きは歩行で発見。
・巾木・ドア枠の角も擦れやすい。入居前写真を必ず残す。入居前に既存キズの写真記録(退去時トラブル回避)
・管理会社の入居時チェックシートがあるか確認し、写真添付の可否を聞く。
・共用部の既存破損も記録(搬入時の責任切り分けに有効)。ペット・喫煙履歴(残り臭は入替後も残る場合あり)
・壁紙交換後でも下地や建具に残臭があるケース。クローゼット内で判別。
・“消臭済”表記でも、鼻で確かめるのが鉄則。
建物・共用部・管理状況のチェック

部屋が良くても、建物や管理が行き届いていないと満足度は下がります。
共用部の清潔さや掲示内容など、小さなサインから管理の質を見抜きましょう。
◆ ゴミ置場:清潔さ・曜日・分別・24H可否
収集曜日や分別ルールが明確か、24時間利用可能かを確認。
「臭い」「汚れの放置」は管理体制や住民マナーのバロメーターです。
◆ ポスト・宅配ボックス・防犯カメラ・オートロック
宅配ボックスの台数・故障状況、防犯カメラやオートロックの運用ルールも確認を。
エントランスが暗い・雑然・故障放置なら、防犯意識が低い可能性があります。
◆ 共用廊下・階段:照度/掲示板の雰囲気
照明が暗い、クモの巣や埃が多いなどは清掃不足のサイン。
掲示板には騒音・マナー関連の張り紙が多すぎないかチェック。
静かで清潔、掲示内容が穏やかな建物は、住民トラブルも少ない傾向です。
◆ 駐車場・駐輪場:空き・料金・動線
駐輪場は台数制限や電動アシスト対応かどうかもポイント。
「擦る・詰まる・混む」動線は日常の小さなストレスになります。
周辺環境チェック(昼と夜で印象が変わる)

室内が気に入っても「周辺」が合わないと満足度は下がります。周辺は時間帯で表情が一変することが多いので、可能なら昼と夜の両方を歩いて確認しましょう。見るべき観点と、その場での簡易チェックをまとめました。
◆ 駅まで“実歩”で確認(信号待ち・坂・街灯)
ベビーカーや自転車通勤の人は、歩道の幅や段差、水はね箇所も確認しておくと安心です。
◆ 生活利便施設(スーパー・病院・学区など)
特に帰宅ルートに寄り道できる立地だと日々の利便性が高まります。
また、保育園や学校は空き状況や通学路の安全性、夜間救急や診療時間も確認を。
◆ 飲食店・パチンコ・夜営業店の騒音・臭気
週末の夜など、人通りや車の増減もチェック。店舗裏のゴミ置き場の清潔さは、虫やにおいのリスクを見抜くポイントです。
◆ 浸水ハザード・治安(交番・街灯)
担当者に過去の冠水履歴を聞いたり、周辺の泥跡を見て判断するのも有効です。
夜は街灯の間隔や人通り、交番の距離、自転車の放置状況などから治安の肌感覚をつかみましょう。
内見で不動産会社に聞くべき質問

内見は“見る”だけでなく、“聞く”ことも大切です。
ここでは、不動産会社にそのまま使える質問テンプレと注意点を紹介します。
気になる点はその場で質問し、スマホなどにメモしておきましょう。
複数の物件でも同じ質問を繰り返すことで、違いがはっきり見えてきます。
◆ 直近の募集履歴(賃料推移・入退去理由)
<聞くこと>
「この部屋の直近3件の募集履歴はありますか?掲載賃料の推移と、どれくらいで決まったかを知りたいです。」
「前回の退去理由は何でしたか?(転勤・手狭・騒音・カビ等)」
狙い:相場との乖離・決まりにくさ・住み心地の実態を把握。
メモ欄:掲載賃料 → 決定賃料/募集期間/退去理由
要注意サイン:短期解約が連続/“体感的にうるさい”等の曖昧回答ばかり/募集期間が極端に長い
◆ ネットの実効速度と通信トラブル事例
<聞くこと>
「インターネットは提供方式(光直結/VDSL/CATV)と、実測の事例はありますか?」
「夜間の速度低下や配線トラブルの問い合わせ履歴は?」
狙い:在宅ワークや動画視聴時の体感を予測。表記“光対応”でもVDSLだと実効が落ちる。
メモ欄:方式/最大理論値/住民の実測例(下り○Mbps)
要注意サイン:VDSLで“上限1Gbps”だけ強調/無料インターネットが混雑で常時10~30Mbps
◆ 審査のポイント(勤務形態・保証・分割可否)
<聞くこと>
「この物件の審査は家賃対年収の目安、勤務形態(派遣・フリーランス)で注意点はありますか?」
「保証会社の種類と審査基準(緩め/厳しめ)、連帯保証人の要否は?」
「初期費用のクレカ決済/分割は可能ですか?」
狙い:申込可否の見込みと、通しやすい準備物を先読み。
メモ欄:家賃比率目安(例:月収の30~35%以内)/必要書類/可決のコツ
要注意サイン:保証会社固定で再審不可/在籍確認に時間がかかる/分割不可で初期費用が重い
◆ 入居時・更新時の追加費用を確認
<聞くこと>
「見積に入っていない初期費用(鍵交換・消毒・24Hサポート・消火剤等)は任意/必須どちらですか?金額は?」
「更新料・更新事務手数料、退去時のクリーニング費は固定ですか?原状回復の基準も教えてください。」
狙い:総コストのブレと“任意風必須”を可視化し、比較を正確に。
メモ欄:初期費内訳(必須/任意・金額)/更新料(家賃の○ヶ月)/退去精算方式
要注意サイン:任意と口頭で言いつつ、実質外せない雰囲気/相場超の鍵交換・消毒/クリーニング高額固定
まとめ|チェックリストで「比較基準」を可視化しよう
内見は“部屋を見る日”ではなく、“これからの暮らしを決める日”。
見る・聞く・比べる、この3つを意識するだけで、感覚ではなく根拠ある判断ができます。
見る:採光・騒音・水回り・周辺環境
聞く:募集履歴・構造・ネット速度・費用
比べる:同じ形式でメモして印象を整理
迷ったときは 立地 × 静けさ × 水回り を重視。
人気物件ほどスピード勝負なので、申込準備を整えておくと安心です。
準備と記録ができていれば、内見は“選ぶ不安”から“選べる自信”に変わります。
