賃貸暮らしは、自由度が高くて気軽な反面、実は見えない落とし穴やトラブルの温床でもあります。
「住んでみて初めて気づいた」「聞いてない費用を請求された」「近隣トラブルで毎日モヤモヤ」そんな声は決して珍しくありません。
この記事では、賃貸生活でよくある10の代表的な問題を、実際の事例とともに紹介し、それぞれに対する具体的な対策や注意点をまとめました。
これから引っ越しを考えている人にも、今まさに何かに悩んでいる人にも役立つように、
どんなトラブルがあるのか
それはなぜ起きるのか
どう対応・予防すればいいのか
という3つの視点から整理しています。
失敗しない賃貸暮らしのために、「知っておいてよかった!」と思える実用知識を詰め込みました。ぜひ、あなたの暮らしの安心材料にしてください。
家賃滞納|うっかりが信用を失う原因に

◉ 事例紹介
ワンルームアパートに住む20代会社員Aさん。
月末の給与日が月初の家賃引き落とし日とズレていたため、うっかり残高不足のまま月をまたぎ、家賃の引き落としに失敗。
気づかないまま数日が経ち、管理会社から「家賃が未納になっています」との連絡が。慌てて支払ったものの、翌月も同様に残高不足で再び滞納してしまい、保証会社から催告書が届くことに。
さらに、滞納履歴が記録に残ってしまい、次の引っ越し時に審査が通らず苦労する羽目に。
◉ 解説
家賃の滞納は「ちょっとの油断」から始まります。
一度の遅れでも保証会社や管理会社に記録され、それが信用情報に影響することも。引っ越しの際、賃貸審査に通らないという事態にもなりかねません。
特に、口座残高や引き落とし日のズレは見落としがち。引き落とし失敗に気づかないまま過ぎると、事態が深刻化します。
◉ 対策ポイント
家賃引き落とし口座に常に余裕を持たせる
引き落とし日をカレンダーに登録し、リマインド通知を活用
保証会社のサービス内容を確認し、滞納時の対応フローを理解しておく
万一遅れてしまったら、すぐに管理会社へ連絡する誠実な対応を
家賃滞納は、「信用」を失うきっかけになるリスクの高いトラブル。
自動引き落としやリマインドの仕組みを活用し、「うっかり」を防ぐことが最大の予防策です。
特に若い世代や一人暮らしを始めたばかりの人にはありがちなミスだからこそ、「しくじり事例」から学んで備えましょう。
騒音トラブル|感情的な対処は逆効果

◉ 事例紹介
築30年の木造アパートに住む30代のBさん。
上階に若いカップルが引っ越してきた後、夜中にドタドタと足音が響くように。深夜1時を過ぎても笑い声やテレビの音が止まらず、眠れない日々が続いた。
ある日、我慢の限界に達したBさんは、怒りに任せて天井を棒で叩いて抗議。
すると逆に上階の住人が「嫌がらせを受けた」と管理会社にクレームを入れ、Bさんが注意されるというまさかの展開に。
◉ 解説
騒音トラブルは、主観の問題が大きく関わるデリケートな問題です。
聞こえ方の感じ方には個人差があり、「普通に生活してるだけ」と思っている相手に悪意はないことも多い。
特に木造や築年数の古い物件は防音性能が低いため、生活音でも大きく聞こえる構造になっています。そして最も重要なのは「感情的な行動が逆効果になる」ということ。直接の注意や抗議はトラブルをこじらせるリスクが高いです。
◉ 対策ポイント
まずは音の発生時間・頻度・内容を記録(騒音日記)
→例:「3/5 23:45〜0:20 足音と話し声」「3/8 深夜1時 TVの重低音」など証拠があると、管理会社も動きやすい
録音アプリやスマホで音を記録するのも効果的(私的利用に限る)
管理会社に冷静に相談し、第三者から注意してもらう
騒音トラブルは、自分の感じ方と相手の認識にズレがあるため、感情的なアプローチはNG。証拠をしっかり残し、管理会社を通して冷静に対応するのが鉄則です。
また、「防音性の高い物件を選ぶ」ことも重要な予防策。特に上下階の音が気になる人は、鉄筋コンクリート造の物件を選ぶとトラブルを減らせます。設備の故障|「設備」か「残置物」かで対応が変わる

◉ 事例紹介
2DKマンションに引っ越したCさん。
真夏の8月、備え付けのエアコンを使おうとしたところ、冷風がまったく出ない。
管理会社に連絡すると、「そのエアコンは前の入居者が置いていった残置物なので、修理費は自己負担になります」と言われて唖然。
契約書を見返しても、エアコンについての記載は曖昧で、誰の責任か判断が難しい状況。結局、自費で修理を依頼することになり、想定外の出費に。
◉ 解説
「設備の故障」は、入居後にすぐ発覚するトラブルの一つです。
特に問題になるのは、それが契約上の“設備”なのか、“残置物”なのかの違い。
設備:貸主(大家)が提供・管理するもの → 修理・交換は大家負担
残置物:前の入居者が置いていったもの → 借主の自己責任
入居前に「設備一覧」を明示してもらうことが大切です。書面に残っていれば、トラブルになった際の交渉材料になります。
◉ 対策ポイント
契約前に「設備」と「残置物」のリストを確認・書面で明記してもらう
エアコン、給湯器、ガステーブルなど、生活インフラに関わるものは特に要注意
設備の不具合はすぐに管理会社へ連絡。修理前の自己判断はNG
口頭説明だけで安心せず、重要事項説明書や契約書を確認する癖をつける
設備の故障は避けがたいことですが、トラブルになるかどうかは“契約内容次第”。
「誰がどこまで責任を持つのか?」を事前に明確にしておくことで、後々の余計な出費やストレスを防げます。
水漏れ|小さな異変を放置しない

◉ 事例紹介
築25年の賃貸マンションに住むDさん。
ある日、洗面台の下からうっすら水が染み出しているのに気づいたが、「まあ大丈夫だろう」と放置。数日後、床が湿って変色し始め、ついに下階の住人から「天井から水が漏れてる!」と苦情が。
管理会社が調査した結果、Dさん宅の排水管の亀裂が原因で、下の階の天井クロスも水浸しに。「なぜすぐ連絡しなかったのか」と責任を問われ、一部の修繕費を負担することに。
◉ 解説
水漏れは、放置すると被害が連鎖的に広がるリスクの高いトラブルです。
自分の部屋だけでなく、下の階や隣室、さらには建物全体への被害にもつながる可能性があります。
特に古い物件では、パッキンの劣化や配管の破損が起きやすく、洗面台の下やトイレの裏、エアコンの排水口など、見落とされがちな箇所に注意が必要です。
◉ 対策ポイント
異変に気づいたら、すぐに管理会社または大家に連絡する
応急処置(バケツやタオルで水を受ける、止水栓を閉める)も並行して実施
入居時・定期的に、水回りの状態を点検する習慣をつける
下階への被害が出た場合は、誠意をもって対応。火災保険の「借家人賠償責任補償」が使えることも
水漏れは「早期発見・即連絡」が鉄則です。
放っておくと、自分だけでなく周囲の住人にまで迷惑がかかり、賠償問題にも発展します。
契約時の追加費用|よくある“聞いてない費用”

◉ 事例紹介
初めて一人暮らしを始めることになったEさん。
家賃6万円の1K物件を気に入り、仲介業者から「初期費用はだいたい20万円くらいですね」と聞いて納得し、そのまま申込みへ。
ところが、いざ契約段階になると提示された見積もりには、「消毒施工料:16,500円」「24時間サポート費用:11,000円」「鍵交換代:22,000円」「室内抗菌費:13,200円」といった項目がずらり。
説明を求めても、「どこもこれくらい普通ですよ」とあしらわれ、結局合計で28万円以上に。契約直前で断りづらく、そのまま支払うことに。
◉ 解説
契約時の追加費用トラブルは、「聞いてないのに費用が乗ってる」という典型的なパターンです。特に初めて部屋を借りる人にとって、専門用語や業界慣習が分かりづらく、不明瞭な名目で上乗せされるケースが多発しています。
中には実際には任意オプションであるにもかかわらず、必須のように見せて請求するケースも。
◉ 対策ポイント
「初期費用の内訳」を契約前に必ず書面でもらう(明細にしてもらう)
「これは任意ですか?断れますか?」と一つ一つ確認する習慣を
他の物件と比較検討し、不明瞭な請求がないか相場感を持つ
「すぐに決めてください」に流されない。冷静な判断を
契約時の追加費用は、“確認不足”が後悔の元。 特に、仲介業者が提案する「セットプラン」や「安心サポート系」は実はオプションであることが多いです。
「初期費用=敷金・礼金・仲介手数料・前家賃+本当に必要な諸費用」この構成を基本に、納得できない名目にはしっかりと理由を尋ねましょう。“安く借りたつもりが高くつく”ことを防ぐ鍵は、確認と比較にあります。
原状回復費用|退去時のトラブルを防ぐには

◉ 事例紹介
賃貸アパートに5年間住んでいたFさん。
契約満了で退去する際、「丁寧に使ってきたから、特に修繕費はかからないだろう」と思っていた。
ところが退去後に届いた請求書には、「壁紙全面張り替え費:55,000円」「ハウスクリーニング費:33,000円」など、合計で9万円超の原状回復費が。
管理会社に確認すると、「タバコのヤニや家具による床のへこみも含めて、借主負担です」とのこと。しかしFさんは非喫煙者で、へこみも家具の重みで自然にできたものであり、納得がいかずトラブルに。
◉ 解説
原状回復をめぐるトラブルは、退去時に“想定外の請求”が来るパターンが多いです。でも実は、「借主が負担しなくていい部分」も多く、国交省のガイドラインでは以下のように定められています。
通常使用による「経年劣化」や「自然な汚れ・傷」は貸主負担
借主が故意・過失で汚した・壊した部分だけが借主負担
つまり、壁紙の黄ばみや家具の設置跡、日焼けなどは本来請求されるべきではないケースもあるのです。
◉ 対策ポイント
入居時に室内の状態を写真・動画で記録しておく
契約書や重要事項説明書で、原状回復の特約内容を必ず確認する
退去時にも自分で部屋の状態を記録し、立ち会いの際に主張できるよう準備する
納得できない請求が来た場合は、国交省のガイドラインをもとに交渉する
原状回復費用は、知識があるかどうかで結果が大きく変わる領域です。
「とりあえず言われたまま払ってしまう」のではなく、「それは本当に自分の負担か?」と確認する姿勢が大切。
入居時・退去時ともに“記録を残す”ことが最大の防御策です。写真は「言った・言わない」を超えてあなたを守ってくれます。
駐車場の無断使用|証拠と冷静な対応がカギ

◉ 事例紹介
2LDK賃貸マンションに住むGさん。
ある日帰宅すると、自分が契約しているはずの駐車スペースに見知らぬ車が停まっていた。何度か続いたため、防犯カメラの映像を管理会社に確認してもらったところ、どうやら近隣の来客が勝手に停めていたことが判明。
Gさんはしばらくの間、空いている別の区画に車を停めて対応していたが、それが逆に「契約外使用」として指摘される事態に。最終的にトラブルは収まったものの、納得のいかないやりとりに精神的にも疲れてしまった。
◉ 解説
駐車場の無断使用は、「誰かが勝手に使っている」という見えないストレスが非常に大きな問題です。 しかも、相手の特定が難しい上に、こちらがルールを守っているのに不利益を受けるという理不尽さも。
また、勝手に別の場所に停めると、今度は自分がルール違反者になってしまう危険性もあります。
◉ 対策ポイント
無断駐車を発見したら、車のナンバー・写真を記録し、すぐに管理会社へ報告
防犯カメラがある場合は映像提供を依頼し、相手の特定を促す
張り紙などの“直接の警告”はトラブルの元になるため避ける(管理会社経由が基本)
再発防止のために、管理会社に「注意喚起文の掲示」などの対応を依頼する
駐車場の無断使用は、自分がルールを守っているからこそ怒りが湧くトラブルです。だからこそ、感情的にならず、証拠を残して冷静に管理会社へ対応を依頼することが大切
“他人の迷惑行為”に自分が巻き込まれないためにも、「自分の正当性を示せる証拠」を残すのが鉄則です。
入居時の清掃不足|入室直後の記録が命

◉ 事例紹介
賃貸アパートに引っ越したばかりのHさん。
鍵を受け取って入居初日、ワクワクしながら部屋に入ったところ、床には髪の毛やホコリ、キッチンのシンクには水アカや油汚れがべったり。
「ちゃんと清掃済みって言ってたのに…」と落胆しつつ、すぐに管理会社へ連絡。
ところが、「すでにクリーニングは完了しているので、そちらで対応をお願いします」と冷たい返答。
幸い、入居直後に写真を撮っていたことが決め手となり、後日管理会社が清掃業者を再手配。何とか費用負担なしで済んだ。
◉ 解説
入居時の清掃不足は、“最初の印象”に関わる重要な問題です。
本来、前の入居者の退去後には「ハウスクリーニング」が行われ、新しい生活が始められる状態で引き渡されるべきですが、業者任せでクオリティにバラつきがあることも。
また、入居後に指摘しても「あなたが汚したのでは?」と疑われるケースもあるため、“いつ・どこが・どうだったか”を記録することが肝心です。
◉ 対策ポイント
入居直後に、室内の状態を写真・動画で残しておく(特に水回り・床・窓・収納)
「清掃が不十分」と感じたら、当日中に管理会社へ連絡。日時と内容も記録
可能ならクリーニング報告書や完了日を確認し、「どこまでが対応範囲か」把握しておく
清掃が不十分な場合、再清掃の依頼や一部費用免除を交渉できることもある
清掃不足は、「誰かの仕事の雑さ」が自分の生活の質に直結する、見過ごせない問題です。でも、対応はシンプル。「記録」と「初動の早さ」がすべてです。
気持ちよく新生活を始めるためにも、“部屋に入った瞬間が勝負”と心得て、チェック&記録を習慣にしましょう。
更新料・家賃値上げ|契約書にすでに書かれているかも?

◉ 事例紹介
賃貸マンションに2年住んでいたIさん。
更新時期が近づき、管理会社から届いた更新書類を見てびっくり。家賃が月5,000円アップ&更新料1ヶ月分が追加されていた。
契約時には「更新時の費用についての詳細な説明はなかった」と感じたIさんは、納得できず問い合わせ。しかし契約書には、「契約更新時に賃料改定の可能性あり」「更新料1ヶ月分」と明記されており、“知らなかった”では通用しない状況に。
引っ越しも検討したが、他の物件も似たような条件だったため、結局そのまま契約更新することに。
◉ 解説
更新時の費用や賃料改定は、タイミングが突然で、しかも断りづらいのがやっかいなポイントです。
特に地方都市では、更新料がない物件もある一方、都市部と同じように1ヶ月分を請求する管理会社もあり、地域差や物件ごとのルールに注意が必要です。
また、家賃の値上げは借主の同意が原則ですが、「契約書で合意済」とみなされているケースも多いです。
◉ 対策ポイント
契約時に、「更新料の有無・額」「家賃改定の可能性」について確認・メモを残す
更新案内が届いたら、“何が変わったのか”を必ずチェックし、不明点は管理会社に質問
家賃値上げが妥当かどうか、周辺の相場と比較して判断する
納得できない場合は、交渉する余地もあるが、強気すぎると関係が悪化するリスクも
更新料や賃料の値上げは、「知らなかった」「言われなかった」で済ませられない、“契約書ベースのトラブル”です。だからこそ、契約時に「将来の話」まで含めて確認する視点が大切になります。
引っ越すか、更新するか。その判断材料として、契約条件の再確認と、冷静な情報整理がカギです。
入居者間のトラブル|個人戦ではなく、チーム戦で

◉ 事例紹介
賃貸マンションに住むJさん。
共用廊下に、隣の住人がベビーカーやゴミ袋を頻繁に放置していたため、Jさんは「通行の妨げになるし不衛生だ」と感じ、直接注意。
すると相手は逆ギレ。「いちいち細かいことを言わないで!」と怒鳴られ、以降、会うたびに嫌味を言われるようになってしまった。
精神的に追い詰められたJさんは、管理会社に相談。管理会社が掲示板に「共用部の私物放置禁止」の注意書きを貼ってくれたことで、状況は徐々に改善した。
◉ 解説
入居者間のトラブルは、直接の指摘が“人間関係の火種”になるケースが多いのが特徴です。「ゴミ出しルールを守らない」「共用部に私物を置く」「無断で洗濯物を干す」など、小さな違反が蓄積してイライラにつながりがち。
ただし、ここで直接対処すると、相手の性格によってはトラブルが拡大するリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
◉ 対策ポイント
トラブルの内容・日時・頻度を記録(写真も有効)
直接の注意は避け、まずは管理会社へ相談するのが鉄則
「自分だけが不満を感じているのか」も一度立ち止まって考える
管理会社からの「掲示による周知」や「全体通知」を依頼するのが効果的
入居者間のトラブルは、感情と人間関係が絡むため非常にデリケートです。
一番のコツは、自分が悪者にならずに、管理会社を通してルールを整備してもらうこと。
トラブルの芽を大きくしないためにも、冷静・客観的な視点と行動が求められます。
まとめ|“知っているかどうか”が安心の分かれ道
賃貸生活は、自由で柔軟な暮らし方ができる反面、「知らなかった」では済まされないトラブルも多く潜んでいます。
今回ご紹介した10の事例は、どれも実際に多くの人が経験している“ありがちな落とし穴”です。そして、そのほとんどが事前の確認やちょっとした対処で防げるものばかりでした。
ここで改めて大事なのは、「問題が起きた時にどうするか」だけでなく、「起こさないために、何を準備しておくか」という視点です。
契約内容の確認を怠らない
小さな違和感にもすぐ反応する
感情的にならず、記録と冷静な対処を心がける
これらの基本を押さえておくだけで、あなたの賃貸生活はもっと快適で、安心感のあるものになります。
引っ越しを検討中の方も、今の住まいで悩みがある方も、この記事が「暮らしのリスクを減らすヒント」になれば幸いです。困ったときは一人で抱え込まず、管理会社や専門家の力も、ためらわず借りていきましょう。